研究室沿革
Last modified 21 JULY 2020
この時期の研究は主として,クロマトグラフィー用の高感度・高選択的新規検出法の開発,クロマトグラフィーによる分子構造に関する情報の取得,微量環境汚染物質の精密分離と分子構造推定への応用などの研究が行われた。また,電気分析化学へのパターン認識の応用研究や分子認識に基づく非分離計測法として,固定化酵素を用いる連続流れ分析法の開発研究も行われた。
この時期の主な研究分野は電気分析化学,光分析化学,分離分析化学,生化学的方法と多岐にわたった。電気分析化学の分野ではランダムパルスボルタンメトリーによる脳内の神経伝達物質の生体内計測に取り組み,光分析の分野では高速の遠紫外共鳴ラマン分光法を開発して,脂質二分子膜中のペプチドなど生体関連物質の立体構造の解明への応用を行った。
そのほか,超臨界流体クロマトグラフィーの研究も行われた。
電子化学測定・解析法の分野では,超微小電極を用いるナノ秒電子化学測定法,電極界面現象の in-situ ラマン分光やESR測定法,電解ストップトフロー分光法等の開発により不安定化学種のダイナミクスおよび電子移動過程のフォトケミストリーの研究を行った。また,走査プローブ顕微鏡の分野では,ニアフィールド・フォトンを励起光とする近接場走査蛍光顕微鏡分析法を提案し,ナノメートルの分解能をもつ光学顕微鏡の開発研究を推進した。さらに,超高分解能走査型表面元素分析顕微鏡を開発して,材料表面の局所化学構造や結合状態を原子・分子レベルで解析するナノキャラクタリゼーションの研究を行った。
その他,高機能化学センサーやフェムトモル量の電気化学FIA分析法,多成分分別蛍光検出流れ分析法,クロマトグラフ用ガス電極検出器,超臨界流体抽出 (SFE) /超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) などの開発研究も行った。
平成15(2003)年3月,北海道大学理学研究科化学専攻から 北川 文彦 が助手として着任し,小島研究室時代からのスタッフである 森下 富士夫 助教授とともにスタッフ3名の体制が確立した。なお,平成14年度には事務補佐(教授秘書)として 澤村 映里佳 が在籍(2002.4.〜2003.3.)し,その後任として 武田 真由子 が就任した(2003.4.〜2007.12.)。
平成15(2003)年6月,本分野は化学系・電気系専攻の桂キャンパスへの移転の先陣を切って引っ越しを行い,新天地での研究が開始された。移転前の研究室は工化総合館(工学部4号館)の3階・2階・地階に分散し,またそれぞれの部屋が狭かったため実験環境は決して良好ではなかったが,桂キャンパスでは集中型の広く新しい実験室に変わり,研究環境は飛躍的に改善された。
「キャピラリー電気泳動 (CE) の高性能化・高機能化を目指した研究」では,超微量・迅速分析が可能で,高い分離性能を持つCEをさらに高性能化・高機能化し,プロテオーム解析やメタボローム解析など実分析へ適用するための基礎研究を推進している。CEにおける高性能検出法の開発では,オンライン試料濃縮法適用による検出感度向上,熱レンズ顕微鏡 (TLM) による高感度検出,質量分析法 (MS) による高選択的高感度検出などについて検討を行っている。また,ミクロスケールの新規分離場の創成として,タンパク質固定化キャピラリーによる光学異性体の分離,機能性微粒子を用いるCEによる生体関連物質の分離,ナノLC用高性能モノリスキャピラリーカラムの開発などにも取り組んでいる。
さらに,「マイクロチップを用いる高性能分離・高感度検出集積化システムの開発」では, 光リソグラフィー技術などいわゆるナノテクノロジーを利用して,マイクロチップ上にさまざまな形状の微小流路や微小容器を作製し,その中で反応・分離・精製など一連の化学操作を実行する統合化化学分析システム (m-TAS) の実現を目指した基礎研究を行っている。特に,通常のCEに比べてさらに高速分離が可能であるマイクロチップ電気泳動 (MCE) について,分離手法としての特性や性質に関する基礎研究を行い,マイクロチップ等電点電気泳動によるタンパク質の高性能高速分離,MCE-TLMによる高感度検出,新規多機能マイクロチップの製作,オンライン試料濃縮の適用によるMCEの高感度化,MCE-MSによる高感度高選択的分離検出システムの構築,マイクロチップ製作用新規材料の開発などを通して,同手法のさらなる高性能化を目指している。
このほか,「次世代バイオチップなど生体関連分野の分析・解析システムの開発」にも取り組む一方,SFC手法の開発研究や,超高温水を移動相とする高速液体クロマトグラフィーの開発研究も行っている。
この間,平成19(2007)年12月に事務補佐・武田 真由子が退職し,若林 幹子(2008.1.〜2008.3.)を経て,逢坂 陽子 (2008.4.〜,教務補佐)に引き継がれた。
森下 富士夫 准教授が平成21(2009)年3月に定年退職したことを受け,同年4月に北川 文彦が講師に昇任,博士研究員(JSPS特別研究員)であった 末吉 健志 が同じく4月に助教に就任した。
平成23(2011)年4月に 北川 文彦 講師が弘前大学に准教授として転出し,平成24(2012)年4月に,東北大学環境科学研究科から 久保 拓也 が准教授として着任した。
研究室創設10周年を記念して,平成24(2012)年4月28日(土) に10周年記念OBOG会が松井本館(柳馬場六角下ル)にて開催された。席上,桂材で製作した大塚研の表札(看板)が記念品として研究室に贈呈され,後日教授室入口横に掲示された。
平成25(2013)年1月に 末吉 健志 助教が大阪府立大学に(テニュアトラック)助教として転出し,平成25(2013)年4月に,名古屋大学工学研究科(博士課程)から 内藤 豊裕 が助教として着任した。 内藤助教は,令和2(2020)年6月に九州大学に助教として転出した。
文中敬称略。